Днепровский рубеж
2009年 ベラルーシ 131分
監督:デニス・スコヴォゾウ
1941年6月、保安部隊に逮捕されて拷問されていた陸軍将校が突如として釈放されると歩兵部隊の師団長としてドニエプル川に近い都市モギリョフに送られ、そこで抗戦の指揮にあたる。
厭世観たっぷりの音楽が流れるところへシュトゥーカの攻撃を受けた列車の脇でカタツムリが交尾しているとか、死体が転がる列車の床をカメが這っているとか、He111の編隊がトンボにオーバーラップするとか、序盤の奇妙な演出にいささか首をひねった。
正攻法で戦争映画を作ることよりも、その先の得体の知れないなにかに昇華させようとしているような気配があって、中盤以降も三号戦車が踏みにじる麦の穂がアップになったり、塹壕の底で幼い少女がぽかんと口をあけて戦闘を見上げていたり、看護婦二人が兵士のからだから破片を抜きながら自分が見た夢について語り合ったり、師団長が伝道の書について語りながらいきなりギターを弾き始めたり、といった具合に微妙に変な場面が登場する。もう二押しくらいすれば作り手が意図したようななにかに化けていた可能性も否定できないが、力が足りていないところがあって、残念ながら作品としては不足が目立つ。
とはいえ戦闘シーンはかなり立派なもので、少々CGが安めなのが気になったものの、陣地戦から遭遇戦、市街戦と背景を変えながらドイツ軍の攻勢に押されたソ連軍がNKVD、義勇軍を動員して抵抗を続け、最後に弾がなくなると肉弾戦を挑むところまで、視点を惜しまずに立体的に描こうとする努力があって好ましい。ネーベルヴェルファーは映画では初めて見たと思う。
Tetsuya Sato