Lady in The Water
2006年 アメリカ 110分
監督:M・ナイト・シャマラン
中庭に小さなプールを備えたアパートがある。そのアパートの管理人クリーヴランド・ヒープは広い心に悲しみをたたえた男であったが、ある日プールで水の精と出会い、この水の精を青の世界に帰すためにおとぎ話を確かめ、アパートの住人から必要な人材を発掘していく。
本来ならばどこかの村が出てくるところがフィラデルフィアのアパートで垂直にかつ多民族的に展開されているだけで、そこを除けばただもうストレートなおとぎ話であり、そのきわめてシャマラン的な再話である。こけおどしのような謎もどんでん返しもあろうはずがない。だからブライス・ダラス・ハワード扮する水の精がどこか水妖記的にちゃぷんとした感じで出現すると、その起源に疑いを入れる間もなくそれはそうだということになり、おばあさんの「昔話」によって登場人物表があきらかにされ、すでにできあがったお話に対してアパートの住人が当てはめられていく。プロットの中心に役割分担の発見があり、そのデザインがやや正直すぎるような気がしたものの、それでも前段で播かれたキャラクターが後段に至って順次刈り取られていく過程は心地よいし、割り当てられたキャラクターが動き始めたときの性急さと奇妙な居心地の悪さ、いったんリセットがかかって再び話が滑り出すあたりの呼吸も抜群にいい。そして最後に登場する光景は『サイン』の比ではないほど、これまたストレートにおとぎ話なのである。好き。徹底してまんまな映画なので、こんなこと現実にあるわけない、といった反応を示す前に、見たまんまを見ることをお勧めしたい。
Tetsuya Sato