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キュンは旅に焦がれていた。ヒツジやヤギの世話から逃げ出して未知の世界に飛び込んで、思うままに冒険がしたいと考えていた。
「なにしろ俺は若いのだから」とキュンは思った。「何にだってなることができる。英雄にだって、なることができる」
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「あんたの運命を分けてくれ」とキュンが言った。「俺も世界を救う英雄になる。だから俺も邪悪な黒い力と戦うんだ」
ヒュンとクロエは羊飼いのキュンを仲間に加えた。三人で強い酒を酌み交わし、夜になるとヒュンとクロエがともに休んだ。二人の寝床から言葉にならない声がもれた。キュンはそれを最後まで聞いた。
「親方に挨拶をする」
朝になるとキュンが言った。親方の家は山をひとつ越えた先にあった。前掛けをかけて出てきた寝ぼけ顏の親方を、キュンは羊飼いの杖を振って殴り倒した。倒れた親方を蹴りつけて、顔に向かって唾を浴びせた。続いてヒュンとクロエが家に飛び込み、めぼしい物を奪い取った。古い銃があったので、ヒュンはそれを肩にかけた。親方の妻と息子がおびえていた。クロエが家に火を放った。親方の妻の髪に火がついて、火だるまになって転がるのをクロエは笑って見下ろしていた。動かなくなるまで笑っていたが、それでもクロエの心は晴れなかった。
青い魔法玉は親方がキュンに与えたものだった。親方は村の売人からそれを手に入れていた。ヒュンとクロエはキュンを連れて村へ行った。堂守の小屋で売人を見つけて取り囲んで締め上げた。
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
「なにしろ俺は若いのだから」とキュンは思った。「何にだってなることができる。英雄にだって、なることができる」
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「あんたの運命を分けてくれ」とキュンが言った。「俺も世界を救う英雄になる。だから俺も邪悪な黒い力と戦うんだ」
ヒュンとクロエは羊飼いのキュンを仲間に加えた。三人で強い酒を酌み交わし、夜になるとヒュンとクロエがともに休んだ。二人の寝床から言葉にならない声がもれた。キュンはそれを最後まで聞いた。
「親方に挨拶をする」
朝になるとキュンが言った。親方の家は山をひとつ越えた先にあった。前掛けをかけて出てきた寝ぼけ顏の親方を、キュンは羊飼いの杖を振って殴り倒した。倒れた親方を蹴りつけて、顔に向かって唾を浴びせた。続いてヒュンとクロエが家に飛び込み、めぼしい物を奪い取った。古い銃があったので、ヒュンはそれを肩にかけた。親方の妻と息子がおびえていた。クロエが家に火を放った。親方の妻の髪に火がついて、火だるまになって転がるのをクロエは笑って見下ろしていた。動かなくなるまで笑っていたが、それでもクロエの心は晴れなかった。
青い魔法玉は親方がキュンに与えたものだった。親方は村の売人からそれを手に入れていた。ヒュンとクロエはキュンを連れて村へ行った。堂守の小屋で売人を見つけて取り囲んで締め上げた。
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