(18)
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気がついたときには、父親の形見のショットガンを持ち出していた。弾倉いっぱいに弾を詰めて、先台をスライドさせて装填した。寝巻き姿のままショットガンを抱えて継母の寝室に飛び込んで、寝台の上の継母に銃口を向けてこう叫んだ。
「この家から、出ていけ」
「クロエ、なんてことを」継母が言った。「きっと気分が悪いんだね、きっと病気にかかったんだね。部屋に戻って少しお休み」
クロエがショットガンの引き金を引いた。壁に大きな穴が開いた。
「出ていけと言ったのよ」
「出ていく、出ていくよ」継母が言った。「おまえがそう言うなら、すぐ出ていくよ。だからさ、どうか命だけは助けておくれ」
クロエは継母と二人の姉を追い出した。継母と二人の姉が残した物を庭で焼いた。それでも気持ちが収まらなかった。物置きから古い木箱を引っ張り出して、それを父親の形見のトラックのフロントグリルに結わえつけた。木箱から運転席まで導火線を引っ張った。
クロエはトラックに 乗り込んで、一本道を突っ走った。雨が降り始めた。ワイパーが雨のしずくをなぎ払った。垂れこめた雲の底で稲妻が踊り、雷鳴が重たく響き渡った。刑務所の明かりが見えてきた。クロエが鋭くハンドルを切った。トラックが道からはずれて、車体が大きく飛び上がった。真正面に壁が見えた。クロエは導火線に火を放ち、ショットガンを抱いて運転席から飛び出した。ぬかるむ地面に落ちて泥をはね上げ、泥にまみれて立ち上がった。
トラックが刑務所の壁に激突した。
一瞬の間を置いて爆発が起こった。
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
「この家から、出ていけ」
「クロエ、なんてことを」継母が言った。「きっと気分が悪いんだね、きっと病気にかかったんだね。部屋に戻って少しお休み」
クロエがショットガンの引き金を引いた。壁に大きな穴が開いた。
「出ていけと言ったのよ」
「出ていく、出ていくよ」継母が言った。「おまえがそう言うなら、すぐ出ていくよ。だからさ、どうか命だけは助けておくれ」
クロエは継母と二人の姉を追い出した。継母と二人の姉が残した物を庭で焼いた。それでも気持ちが収まらなかった。物置きから古い木箱を引っ張り出して、それを父親の形見のトラックのフロントグリルに結わえつけた。木箱から運転席まで導火線を引っ張った。
クロエはトラックに 乗り込んで、一本道を突っ走った。雨が降り始めた。ワイパーが雨のしずくをなぎ払った。垂れこめた雲の底で稲妻が踊り、雷鳴が重たく響き渡った。刑務所の明かりが見えてきた。クロエが鋭くハンドルを切った。トラックが道からはずれて、車体が大きく飛び上がった。真正面に壁が見えた。クロエは導火線に火を放ち、ショットガンを抱いて運転席から飛び出した。ぬかるむ地面に落ちて泥をはね上げ、泥にまみれて立ち上がった。
トラックが刑務所の壁に激突した。
一瞬の間を置いて爆発が起こった。
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