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町にコロエという名の娘がいた。父親は大きな製材所の持ち主で、家は町で一二を争う金持ちだった。ヒュンは町の広場でコロエを見かけて恋に落ちた。ヒュンが話しかけるとコロエの顔が赤くなった。ヒュンがコロエの髪に触れると、コロエは真っ赤になった顔をうつむけた。男たちの腕が伸びてヒュンを路地に引きずり込んだ。立てなくなるまでヒュンを殴り、立てなくなると蹴って唾を浴びせかけた。コロエは結婚が決まっていた。相手は町一番の金持ちで、魔法玉の問屋をしているの男だった。
魔法玉業界で問屋のチュンを知らない者は一人もなかった。チュンを敵にして生き延びた者もいなかった。チュンは強引で残忍で、まったく容赦を知らなかった。商売敵を力でつぶしながら手を広げ、魔法玉の流通をたった一人で仕切っていた。チュンは合法的な魔法玉も非合法の魔法玉も扱った。チュンの手を経なければたった一つの魔法玉も動かすことができなかった。チュンが咳をすれば魔法玉が市場から消え、チュンがうなずけば市場が魔法玉でいっぱいになった。悪事を重ねて富を築き、町の広場に面した場所に宮殿のような家を建てて、バルコニーから行き交うひとを見下ろしていた。
ヒュンは広場に立ってバルコニーを見上げた。コロエの姿がそこにあった。結婚指輪の宝石がコロエの指で輝いていた。
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
魔法玉業界で問屋のチュンを知らない者は一人もなかった。チュンを敵にして生き延びた者もいなかった。チュンは強引で残忍で、まったく容赦を知らなかった。商売敵を力でつぶしながら手を広げ、魔法玉の流通をたった一人で仕切っていた。チュンは合法的な魔法玉も非合法の魔法玉も扱った。チュンの手を経なければたった一つの魔法玉も動かすことができなかった。チュンが咳をすれば魔法玉が市場から消え、チュンがうなずけば市場が魔法玉でいっぱいになった。悪事を重ねて富を築き、町の広場に面した場所に宮殿のような家を建てて、バルコニーから行き交うひとを見下ろしていた。
ヒュンは広場に立ってバルコニーを見上げた。コロエの姿がそこにあった。結婚指輪の宝石がコロエの指で輝いていた。
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