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魔法玉の製造と販売を禁止する法律が成立して工場の認可も小売店の営業許可も取り消されると魔法玉産業は地下にもぐった。どの町でも魔法玉屋の看板が消え、裏通りを根城にする売人たちは粗悪な魔法玉を懐に隠して通行人に声をかけた。粗悪な魔法玉はよくポケットの中で爆発した。いきなり解放された魔法の力が酒場の隅で、寝室やパーティ会場で、あるいは中ボスとの対決の最中に、居合わせた者にやけどを負わせ、雷撃を加え、氷点下の地獄を味合わせた。それでも需要に変わりはなかったので粗悪な魔法玉の流通は続いた。魔法玉を買った者は持ち歩く代わりに宝箱に入れて封印した。そうとわかると金のない冒険者たちは他人の家に押し入って宝箱をこじ開けにかかり、見つかると宝箱の持ち主に襲いかかって金品を奪った。凶悪な事件が次々に起こり、警察の捜査は常に後手にまわっていた。捜査官たちは魔法玉の品質が変わってきていることに気がついた。粗悪な魔法玉はいつの間にか駆逐され、中級品以上が市場に多く出回っていた。ときには極上品も見つかった。捜査官たちは確信した。質の高い魔法玉を供給する秘密のルートが存在する。売人たちを締め上げていくうちに、いくつかのおぼろげな線が浮かび上がった。どの線も街道の南につながっていた。捜査官たちは街道の南に注目した。予言が成就しつつある、とミュンが言った。
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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