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ヒュンとクロエは手配を逃れ、街道を避けて山道を進んだ。山は危険に満ちていた。忍び寄る小鬼を追い払い、オークの気配を察して藪に散弾を撃ち込んだ。姿がどうであろうと怪物だと思えば剣を抜いて斬りかかって、道を切り開かなければならなかった。ヒツジやヤギを捕えて空腹を満たし、陽が暮れると木の根を枕に横たわり、夜明けとともに起き出して旅を続けた。旅人に出会うと笑顔で近づいていって前方にひそむ危険や罠を探ろうとした。なかなか口を割ろうとしない旅人は疑わしいのでヒュンが剣で突き殺した。あるいはクロエがショットガンで吹き飛ばした。至近距離で散弾を浴びた旅人がはらわたを見せて転がっても、クロエの心は晴れなかった。
山をひとつ越えたところで一軒の小屋に行きあたった。扉を蹴破って小屋に入って、金目の物を探して部屋を荒らした。めぼしい物が何もないのに怒ったところで宝箱に気がついた。ヒュンが宝箱をこじ開けようとしていると、今度はクロエがひとの気配に気がついた。部屋の隅の暗がりで誰かが息を殺していた。クロエがショットガンを構えて近づいていった。暗がりを破って若い羊飼いが進み出た。純朴そうな目をしていた。ヒュンは羊飼いの様子を横目に見ながら宝箱をこじ開けた。透き通るような光を放つ青い魔法玉が入っていた。
「おっと」とヒュンが声を上げた。「こいつはなんだか、見覚えがあるぜ」
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
山をひとつ越えたところで一軒の小屋に行きあたった。扉を蹴破って小屋に入って、金目の物を探して部屋を荒らした。めぼしい物が何もないのに怒ったところで宝箱に気がついた。ヒュンが宝箱をこじ開けようとしていると、今度はクロエがひとの気配に気がついた。部屋の隅の暗がりで誰かが息を殺していた。クロエがショットガンを構えて近づいていった。暗がりを破って若い羊飼いが進み出た。純朴そうな目をしていた。ヒュンは羊飼いの様子を横目に見ながら宝箱をこじ開けた。透き通るような光を放つ青い魔法玉が入っていた。
「おっと」とヒュンが声を上げた。「こいつはなんだか、見覚えがあるぜ」
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