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継母はクロエの様子が変わったことに気がついた。妙に楽しげで、ときには笑みすら浮かべていた。
二人の姉もクロエの様子が変わったことに気がついた。
上の姉が母親に言った。
「母さん、母さん。クロエの様子がどこか変だわ」
下の姉も母親に言った。
「母さん、母さん。クロエが幸せそうにしてるわ」
そこで継母はクロエにたずねた。
「クロエ、ずいぶん楽しそうじゃないか」
クロエはすぐに首を振った。
「いいえ、楽しそうになんかしてないわ」
そこで継母はさらにたずねた。
「おや、そうなのかい? 硬くて冷たくて先のない、おまえの亭主に何かあったんじゃないのかい?」
クロエはふたたび首を振った。
「いいえ、硬くて冷たくて先のない、わたしの夫は、硬くて冷たくて先のない、ロボットのままだわ」
継母はクロエに顔を寄せてこうたずねた。
「クロエ、おまえは何か隠してるね?」
クロエは激しく首を振った。
「いいえ、わたしは何も隠してないわ」
継母はクロエに向かってさらにたずねた。
「そうなのかい? 硬くて冷たくて先のない、おまえの亭主は、夜になるとロボットの殻を脱ぐんじゃないのかい?」
クロエはふたたび激しく首を振った。
「いいえ、硬くて冷たくて先のない、わたしの夫は、夜になっても、硬くて冷たくて先のない、ロボットのままだわ」
クロエがそう言うと、くくくくく、と継母が笑った。
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
二人の姉もクロエの様子が変わったことに気がついた。
上の姉が母親に言った。
「母さん、母さん。クロエの様子がどこか変だわ」
下の姉も母親に言った。
「母さん、母さん。クロエが幸せそうにしてるわ」
そこで継母はクロエにたずねた。
「クロエ、ずいぶん楽しそうじゃないか」
クロエはすぐに首を振った。
「いいえ、楽しそうになんかしてないわ」
そこで継母はさらにたずねた。
「おや、そうなのかい? 硬くて冷たくて先のない、おまえの亭主に何かあったんじゃないのかい?」
クロエはふたたび首を振った。
「いいえ、硬くて冷たくて先のない、わたしの夫は、硬くて冷たくて先のない、ロボットのままだわ」
継母はクロエに顔を寄せてこうたずねた。
「クロエ、おまえは何か隠してるね?」
クロエは激しく首を振った。
「いいえ、わたしは何も隠してないわ」
継母はクロエに向かってさらにたずねた。
「そうなのかい? 硬くて冷たくて先のない、おまえの亭主は、夜になるとロボットの殻を脱ぐんじゃないのかい?」
クロエはふたたび激しく首を振った。
「いいえ、硬くて冷たくて先のない、わたしの夫は、夜になっても、硬くて冷たくて先のない、ロボットのままだわ」
クロエがそう言うと、くくくくく、と継母が笑った。
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