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ヒュンはチュンの子分のニュンとともに街道を南へ進んでいった。進むにつれて予言者を見かけることが多くなった。小さな村にたどり着いて、そこで一人の老人に出会った。
「裏の山に予言者がいる」と老人は言った。「川で顔を洗っていると川上に出てきて小便をする。困ったものだ」
ヒュンとニュンは旅を続けた。次の村では背中が曲がった老婆に出会った。
「裏の山に予言者がいる」と老婆は言った。「川で洗濯をしていると川上に出てきて小便をする。困ったものだ」
ヒュンとニュンは旅を続けた。次の村ではしかめっ面の男に出会った。
「裏の山に予言者がいる」と男は言った。「夜中になると下りてきて、ひとの家の便所を勝手に使う。困ったものだ」
ヒュンとニュンは旅を続けた。我が物顔の予言者たちが前方で道をふさいでいた。
「予言者どもだ」とニュンが言った。「ミュンの手先だ。皆殺しにしろ」
ニュンがヒュンに剣を渡した。ヒュンが名もない剣を握った。ヒュンは横目にニュンを見て、一瞬の動作で剣を抜くと切っ先をニュンの胸に突き立てた。引き抜くのと同時にニュンが倒れた。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
予言者の群れが杖をかまえてヒュンを囲んだ。ヒュンは剣を握って予言者たちに目を這わせた。空から現われた黒い影がヒュンをかすめて地上に降りた。黒い鳥がヒュンと予言者たちのあいだに立って、翼を振って羽根を飛ばした。黒い羽根が宙を駆けた。羽根が予言者たちの眉間を貫いた。次々とくずおれていく予言者を背に、それはヒュンに向き直って鳥の皮と黒い翼を脱ぎ捨てた。ロボットの姿が現われた。ロボットが棍棒を振り上げ、一撃でヒュンを打ち倒した。
くくくくく、とロボットが笑った。
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
「裏の山に予言者がいる」と老人は言った。「川で顔を洗っていると川上に出てきて小便をする。困ったものだ」
ヒュンとニュンは旅を続けた。次の村では背中が曲がった老婆に出会った。
「裏の山に予言者がいる」と老婆は言った。「川で洗濯をしていると川上に出てきて小便をする。困ったものだ」
ヒュンとニュンは旅を続けた。次の村ではしかめっ面の男に出会った。
「裏の山に予言者がいる」と男は言った。「夜中になると下りてきて、ひとの家の便所を勝手に使う。困ったものだ」
ヒュンとニュンは旅を続けた。我が物顔の予言者たちが前方で道をふさいでいた。
「予言者どもだ」とニュンが言った。「ミュンの手先だ。皆殺しにしろ」
ニュンがヒュンに剣を渡した。ヒュンが名もない剣を握った。ヒュンは横目にニュンを見て、一瞬の動作で剣を抜くと切っ先をニュンの胸に突き立てた。引き抜くのと同時にニュンが倒れた。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
予言者の群れが杖をかまえてヒュンを囲んだ。ヒュンは剣を握って予言者たちに目を這わせた。空から現われた黒い影がヒュンをかすめて地上に降りた。黒い鳥がヒュンと予言者たちのあいだに立って、翼を振って羽根を飛ばした。黒い羽根が宙を駆けた。羽根が予言者たちの眉間を貫いた。次々とくずおれていく予言者を背に、それはヒュンに向き直って鳥の皮と黒い翼を脱ぎ捨てた。ロボットの姿が現われた。ロボットが棍棒を振り上げ、一撃でヒュンを打ち倒した。
くくくくく、とロボットが笑った。
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