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やはり呪いだ、とネロエは確信した。あと一晩、気がつかないふりをしていれば、あの若者は呪いから解き放たれることになるだろう。ネロエは静かに夜を待った。ロボットが金属の殻を脱ぎ捨てて若者になり、若者がテラスで笛を吹くあいだも待ち続けた。朝焼けを背にして若者が部屋に入って来ると、寝台から飛び出してロボットの殻を両手に抱えた。ネロエはそれを燃え盛る暖炉に放り込んだ。
「愚かな女め」若者が叫んだ。「余計なことをしてくれたな。あと一晩、あとたった一晩で呪いを解くことができたというのに。おしまいだ。俺は行く。おまえはここに一人残って、自分がしでかしたことを一生悔やむがいい」
若者は黒い大きな鳥になって朝の空に羽ばたいていった。ネロエは王冠をかぶり、錫杖を握り、テラスに立って国民に知らせた。
「この国は清浄になりました」
国民は歓声を上げてネロエを迎えた。
「しかし、安心することはできません。邪悪な黒い力はまだこの国を狙っているのです。一人でも多くを腐敗と堕落の道に引き入れようと、虎視眈々と機会を狙っているのです。わたしたちはこの脅威に敢然と立ち向かわなければなりません。邪悪な黒い力を追い払わなければなりません。力を合わせましょう。この国を、そして世界を清浄な場所に保つために、わたしたちは力を合わせなければならないのです。邪悪な黒い力は勢いを増しています。もはや一刻の猶予も許されません」
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
「愚かな女め」若者が叫んだ。「余計なことをしてくれたな。あと一晩、あとたった一晩で呪いを解くことができたというのに。おしまいだ。俺は行く。おまえはここに一人残って、自分がしでかしたことを一生悔やむがいい」
若者は黒い大きな鳥になって朝の空に羽ばたいていった。ネロエは王冠をかぶり、錫杖を握り、テラスに立って国民に知らせた。
「この国は清浄になりました」
国民は歓声を上げてネロエを迎えた。
「しかし、安心することはできません。邪悪な黒い力はまだこの国を狙っているのです。一人でも多くを腐敗と堕落の道に引き入れようと、虎視眈々と機会を狙っているのです。わたしたちはこの脅威に敢然と立ち向かわなければなりません。邪悪な黒い力を追い払わなければなりません。力を合わせましょう。この国を、そして世界を清浄な場所に保つために、わたしたちは力を合わせなければならないのです。邪悪な黒い力は勢いを増しています。もはや一刻の猶予も許されません」
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