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「何しやがる!」キュンが叫んだ。
「ほっといてよ」クロエが叫んだ。「だって本当に、亭主なんだから。結婚式だって、挙げたんだから」
「物好きだなあ」
打たれた頬をさすりながらキュンが言った。
「そんなことより」ヒュンが言った。「ここから逃げ出さないと俺たちはやばい」
「そこをどきなさい」クロエが言った。
腰だめに構えたショットガンを壁に向けて引き金を引いた。石に見せかけた壁紙がはじけて漆喰が飛んだ。二発三発と浴びせると壁に大きな穴が開いた。
「安普請だから、壁に穴を開けて進めば外に出られる」
クロエが穴に飛び込んだ。ヒュンとキュンがあとに続いた。穴の向こうは迷宮の怪物たちの休憩室になっていた。ゼリー状の怪物や下半身が蛇の女やくるくるまわるペンギンがくつろいでお茶を飲んでいた。クロエのショットガンが火を噴いた。ヒュンが剣で突きかかった。キュンが杖で床を突いた。怪物たちの死体の山ができあがったが、クロエの心は晴れなかった。
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
「ほっといてよ」クロエが叫んだ。「だって本当に、亭主なんだから。結婚式だって、挙げたんだから」
「物好きだなあ」
打たれた頬をさすりながらキュンが言った。
「そんなことより」ヒュンが言った。「ここから逃げ出さないと俺たちはやばい」
「そこをどきなさい」クロエが言った。
腰だめに構えたショットガンを壁に向けて引き金を引いた。石に見せかけた壁紙がはじけて漆喰が飛んだ。二発三発と浴びせると壁に大きな穴が開いた。
「安普請だから、壁に穴を開けて進めば外に出られる」
クロエが穴に飛び込んだ。ヒュンとキュンがあとに続いた。穴の向こうは迷宮の怪物たちの休憩室になっていた。ゼリー状の怪物や下半身が蛇の女やくるくるまわるペンギンがくつろいでお茶を飲んでいた。クロエのショットガンが火を噴いた。ヒュンが剣で突きかかった。キュンが杖で床を突いた。怪物たちの死体の山ができあがったが、クロエの心は晴れなかった。
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