2016年1月1日金曜日

2015年の映画 ベスト10


  1. マッドマックス 怒りのデス・ロード
  2. インサイド・ヘッド
  3. スペクター
  4. アントマン
  5. ロシアン・スナイパー
  6. ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
  7. ビースト・オブ・ノー・ネーション
  8. トゥモローランド
  9. ヒックとドラゴン2
  10. ミニオンズひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム
まず、2014年末時点で見ないままに終わっていた『ゴーン・ガール』『ジャージー・ボーイズ』はその後ビデオで鑑賞し、仕上がりは確認した。『ジャージー・ボーイズ』は優れた映画だが、クリント・イーストウッドの仕事ぶりは言わば澄み過ぎていて、ありがたいものを見たという気持ちにはなってもその先がない(そして同じ理由から『アメリカン・スナイパー』もすばらしい作品であることを認めつつ、上の一覧には入れようとしない。クリント・イーストウッドの映画をほめる、というのは聖遺物をほめるような気配があって、ほとんど信仰に近いのではないかと実は感じている。その点では『スターウォーズ』を崇めるのとあまり変わりがないという気もしないでもない。ただ、仮に一方がカトリックだとすれば、他方はサイエントロジーくらい、ということになるだろう)。その点、ロザムンド・パイクの怪演をストレートに引っ張り出した『ゴーン・ガール』のほうが気持ちがいい(ところで『タイタンの逆襲』でアンドロメダをやっていたのがロザムンド・パイクだったと最近気がついた)。
そして2014年に引き続き、ということになるけれど、2015年もあまり映画を見ていない。上半期は心身とももにほぼぼろぼろの状態で、下半期にはいくらか立ち直ったものの、調子はあまりよろしくない。というわけで『セッション』などは予告編を見ただけでもう引きまくって、引きこもったままなんとなくテレビの前に座ってNetflixで『デアデビル』とか『ジェシカ・ジョーンズ』などを眺めていたが、そのせいで頭が1時間の鑑賞サイクルに慣らされたのか、上映時間が2時間を超えると長いと感じるようにもなっている。ちなみにHuluではシェイクスピアの『リチャード二世』以降の史劇を1時間枠の連続ドラマに仕立てた『ホロウ・クラウン』の配信が始まっているが、クォリティはきわめて高いし、アテンションスパンの短いご時勢にシェイクスピアの台詞をいかに際立てるかをよく考えている。ベン・ウィンショーのリチャード二世は見ごたえがあった。一方、Netflixではアルフレッド大王を素材にした『ラスト・キングダム』の配信が始まっていて、ウェザリング入れまくりのアングロサクソン時代を背景になんとなく『ヴィンランド・サーガ』を思わせるプロットを入れ、デーン人の放埓ぶり、サクソン人のお百姓ぶり、信心深く狡猾なアルフレッド大王の微妙な支離滅裂ぶり、とこちらも力作で見ごたえがある。
ともあれ、そのような有様なので、そこでベストテンをやって意味があるのか、という気もしないでもないが、いちおう恒例行事になっているということで、あえて並べてみると上記のような結果になった。もちろん『マッドマックス』がだんとつで1位である。そのことに疑問はないものの、この超おばかな怪物映画のうしろに何を持ってくればいいのか、ほんの少しだけ悩んだ末に好きな映画を好きな順に並べてみることにした。『インサイド・ヘッド』は非常によくできた、よい映画である。『スペクター』については『スカイフォール』よりも落ちるという意見を見かけたが、007映画として見た場合にはこちらのほうが本道を歩いているし、サム・メンデスもその範囲で自由にやっているように見える。『アントマン』はとにかく楽しい映画だったので。『ロシアン・スナイパー』は前向きに評価すべき材料を豊富に備えた力作であり、近年の戦争映画の中でも傑出した仕上がりになっていると思う。『ミッション・インポッシブル』は優れたチームワークが作り出したバランスのよさを評価したい。『ビースト・オブ・ノー・ネーション』はこの監督らしい、誠実に作られた立派な作品である。『トゥモローランド』はかなり趣味な映画だとは思うが、その趣味がわたしの趣味に一致している。『ヒックとドラゴン2』は言われているように前作にはやや見劣りするものの、トゥースレスの飛行シーンを含めて各種表現に大きな改善が加えられており、単独で見る限りでは傑作であるという事実に疑いはない。『ミニオンズ』は今年もっとも期待をはずしてくれた作品ではあるが、それはミニオンが最初から最後までオクトーバーフェストをやっていてほしいという期待に対して、ということなので、その期待をはずせばすばらしく楽しい映画に仕上がっている。ただ、そういう意味ではこれも楽しい映画に仕上がっている、ということで、『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』を同点に入れた。
10位圏内からはもれたものの、『プリデスティネーション』『ジュラシック・ワールド』は重要な映画だと考えている。ちなみに『バードマン』『インヒアレンド・ヴァイス』は、それぞれ理由は異なるものの、わたしの頭の中では駄作に分類されている。あと、2015年にもっとも残念な映画はたぶん『チャッピー』ということになるだろう。


Tetsuya Sato