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ヒュンの不満に気がついたのは、ギュンでもギュンの仲間でもなく、政府の秘密捜査官だった。ギュンの工場の内偵を進めていた捜査官は間もなくヒュンの存在を知り、訓練された鼻でヒュンの不満を嗅ぎ取った。ヒュンを監視して、町に繰り出したところを逮捕して、司法取引を持ちかけた。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンは言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「あいにくおまえの運命に関心はない。だがギュンの逮捕に協力すれば、おまえはそれだけで世界を救った英雄になる」
ヒュンは司法取引を受け入れた。捜査官が段取りを整え、武装警官隊がギュンの工場に踏み込んだ。ギュンと仲間が逮捕され、ヒュンが法廷で証言した。怒り狂ったギュンがヒュンに呪詛の叫びを浴びせかけた。
ギュンの裁判が終わってギュンが刑務所に送られたあと、ヒュンの裁判が始まった。約束のとおり、ギュンの下で犯した罪は不問に付された。しかし検事は山ほどの余罪を見つけ出した。警官隊を全滅させて、ヘリコプターまで撃墜した極悪人は自分自身で罪をあがなう必要があった。判決が下され、ヒュンは刑務所に送られた。
「強い目をしている」
ヒュンを迎えた看守が言った。初老の、穏やかな目をした男だった。
「急ぐな。こらえろ」
初老の看守が肩を叩いた。
「まだ、やり直せる」
初老の看守の声を聞いて、ヒュンの目から涙がこぼれた。
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
「俺は運命を受け入れている」とヒュンは言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「あいにくおまえの運命に関心はない。だがギュンの逮捕に協力すれば、おまえはそれだけで世界を救った英雄になる」
ヒュンは司法取引を受け入れた。捜査官が段取りを整え、武装警官隊がギュンの工場に踏み込んだ。ギュンと仲間が逮捕され、ヒュンが法廷で証言した。怒り狂ったギュンがヒュンに呪詛の叫びを浴びせかけた。
ギュンの裁判が終わってギュンが刑務所に送られたあと、ヒュンの裁判が始まった。約束のとおり、ギュンの下で犯した罪は不問に付された。しかし検事は山ほどの余罪を見つけ出した。警官隊を全滅させて、ヘリコプターまで撃墜した極悪人は自分自身で罪をあがなう必要があった。判決が下され、ヒュンは刑務所に送られた。
「強い目をしている」
ヒュンを迎えた看守が言った。初老の、穏やかな目をした男だった。
「急ぐな。こらえろ」
初老の看守が肩を叩いた。
「まだ、やり直せる」
初老の看守の声を聞いて、ヒュンの目から涙がこぼれた。
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