2015年10月22日木曜日

トポス(4) ヒュンとピュン、追手をかわして山へ逃れる。

(4)
 監視カメラが犯行の現場を捉えていた。警察はすぐにヒュンとピュンを手配した。手配書があらゆる場所に貼り出され、検問があらゆる場所に置かれたので、ヒュンとピュンは追っ手がかかったことに気がついた。すぐさま手近の酒場に飛び込んで、そこにいた客と店員を人質にした。警官隊が酒場を包囲し、交渉人が話し合いを要求した。魔法玉を投げつけると、炎が吹き出て交渉人を焼き尽くした。ヒュンとピュンは浴びるように酒を飲んで魔法玉を投げ続けた。警官隊は雷に打たれ、氷に包まれ、地割れに飲まれて全滅した。
「大勝利だ」とヒュンが言った。
「逃げるぞ」とピュンが言った。
 ヒュンとピュンは人質から金品を奪い、魔法玉を使って酔いを醒まし、酒場に火を放って山へ逃げた。
 険しい山道を進んでいくと上空に警察のヘリコプターが現われた。ヒュンが魔法玉を投げつけると稲妻がほとばしってヘリコプターを切り裂いた。それと同時に新手のヘリコプターが尾根を越えて飛び出してきて、一瞬のうちに着陸して武装した警官隊を吐き出した。ヒュンとピュンが魔法玉を警官隊に投げつけた。警官たちが炎に包まれ、銃弾の雨がヒュンとピュンがなぎ倒した。ヒュンとピュンは血に染まった。回復用の魔法玉は一つしかない。ヒュンはそれを自分に使った。たちまちのうちに元気になって、痛みにうめくピュンを残して岩陰を伝って逃げ出した。道から外れて森を走り、小屋を見つけて迷わずそこに飛び込んだ。中には男たちがいた。ヒュンは最後の魔法玉を男たちに投げつけた。魔法玉から白い稲妻が飛び出したが、何かに弾かれてまたたいて消えた。

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