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ヒュンが飛び込んだ小屋は無認可の魔法玉工場だった。そこでは法律の縛りを受けずに強力な魔法玉を作っていた。法律で禁止されている全体攻撃型や重力制御系の危険な魔法玉も作っていた。その工場で作られる魔法玉は品質が高いことで知られていて、どれもが鮮やかな青い色を放ったので青の魔法玉と呼ばれていた。森の中の工場は青の魔法玉工場と呼ばれ、工場の持ち主は青の魔法玉の男と呼ばれていた。
ギュンという名の男だった。立ちすくむヒュンの前にギュンが姿を現わした。スキンヘッドに黒眼鏡をかけ、穏やかな声で話すこの男は、元々は公立高校の化学の教師だったが薄給を補うために魔法玉ビジネスに手を伸ばし、小遣い稼ぎのつもりがひとを増やし、生産を増やし、強力無比の魔法玉で商売敵を無慈悲に潰していくうちにいつの間にか名前を馳せて、いまではこれを本業にしていた。
ヒュンは男たちに小突かれながら小屋の地下に下りていった。小屋の地下は洞窟で、洞窟の壁には青い肌のエルフが鎖で縛りつけられていた。ギュンがヒュンにナイフを渡した。よく研ぎ澄まされて、刃渡りがヒュンの前腕ほどもあるナイフだった。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンは言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「おまえの運命がここにある」とギュンが言った。「本気で英雄になるというのなら、その資格をわたしに見せてみろ」
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
ギュンという名の男だった。立ちすくむヒュンの前にギュンが姿を現わした。スキンヘッドに黒眼鏡をかけ、穏やかな声で話すこの男は、元々は公立高校の化学の教師だったが薄給を補うために魔法玉ビジネスに手を伸ばし、小遣い稼ぎのつもりがひとを増やし、生産を増やし、強力無比の魔法玉で商売敵を無慈悲に潰していくうちにいつの間にか名前を馳せて、いまではこれを本業にしていた。
ヒュンは男たちに小突かれながら小屋の地下に下りていった。小屋の地下は洞窟で、洞窟の壁には青い肌のエルフが鎖で縛りつけられていた。ギュンがヒュンにナイフを渡した。よく研ぎ澄まされて、刃渡りがヒュンの前腕ほどもあるナイフだった。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンは言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「おまえの運命がここにある」とギュンが言った。「本気で英雄になるというのなら、その資格をわたしに見せてみろ」
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