The Last Castle
2001年 アメリカ 131分
監督:ロッド・ルーリー
合衆国陸軍のユージーン・アーウィン中将はベトナムでの捕虜体験を持つ歴戦の勇士であったが、ブルンジでの作戦中に大統領命令に違反して部隊を動かし、犠牲者を出した罪によって軍法会議で10年の刑を言い渡されて軍の重犯罪刑務所に収監される。
刑務所の所長ウィンター大佐は実戦経験を持たない人物で古い武器のコレクションなどをしていたが、アーウィン中将に言わせれば実戦経験がないからそんなことをするのであった。所長にしてみれば将官の囚人というのはそれでなくても扱いが悪いし、その上にそりがあわないし、見ていれば規則を無視して勝手なことを始めるし、指摘をすると軍法を盾に反論してくるし(つまり所長が悪いわけだが)、それで上官の准将に意見具申すれば向こうは将官同士のよしみで中将の方に味方する。そこで所長はじっと我慢をして中将を押さえ込むための努力を開始し、試みに懲罰を加えたりしてみるといよいよ関係は険悪になり、悪いことに中将は囚人どもの気持ちを引きつけにかかる。模範囚になってくれと頼み込んで譲歩の提案を持ちかければ代わりに辞任を要求され、気がついた時には妥協の余地はなくなっていた。
所長が動くよりも先に中将の方が先に動き、囚人どもを駆り集めて部隊に編成し直し、作戦を練って指令を飛ばす。勝利条件は所長を解任に追い込むこと。スリングショットで火炎瓶を打ち込んで監視楼を制圧し、どこからともなく天秤式の投石器を引っ張り出して管理棟に攻撃を加え、鎮圧部隊が出現すれば密集陣形を組んで立ち向かい、放水車にはあれ、ヘリコプターにはこれ、と次から次へと対抗手段を持ち出して、つまり囚人暴動ではなくて本当に軍事行動をやっているというところがミソなのであろう。
アイデアは悪くないものの、プロットはアイデアを成立させるための最小限の分量しか用意されていないので、主人公アーウィン中将も「歴戦の勇士で尊敬される将軍」とひらがなで書いてあるだけなのである。そういう役をロバート・レッドフォードが『スパイ・ゲーム』同様、「だって俺もう老人だから」という顔で演じている。 対するウィンター大佐も「悪い奴」と書いてあるだけなので、演じるジェームズ・ガンドルフィーニは最初から最後まで悪役笑いをしているだけ。もちろんプロットが甘くてもクライマックスの戦闘がうまくできていれば何も文句はないわけだけど、そのあたりもいささかご都合主義な感じなので、もうちょっと頑張りがほしかったと思う。
Tetsuya Sato