Pain & Gain
2013年 アメリカ 129分
監督:マイケル・ベイ
幼いころから筋トレに耽溺してきたダニエル・ルーゴは向上心から詐欺行為を働いた前科があったが更生してジムのトレーナーになってジムの顧客拡大に寄与してそれなりの地位を得て、察するところ分不相応な支出をしたせいか請求書の束に悩むことになり、状況を打破するためにジョニー・ウーと名乗るいかにも怪しげな東洋人の自己啓発セミナーに出席したところきわめて顕著な感化を受けて行動を開始し、ジムの顧客でレストランを経営しているコロンビア系ユダヤ人ヴィクター・カーショウにターゲットを定めると事実上のステロイド中毒でED治療のために資金を必要としているエイドリアン・ドアバル、ニューヨーク出身の犯罪者で服役中にイエスの啓示を得てイエスの力によってひとを殴る力を得たと考え、イエス一直線と描いたTシャツを着ている(こともある)ポール・ドイルを仲間に引き入れ、度重なる失敗にもくじけずにとうとうヴィクター・カーショウを誘拐すると暴力と強要で財産譲渡の書類にサインさせることに成功するが、正体がばれた、ということでヴィクター・カーショウ殺害を決意し、決意によって殺されたはずのヴィクター・カーショウは病院へ運ばれて警察の質問を受け、ヴィクター・カーショウが事実を告げたにもかかわらず、ヴィクター・カーショウはコロンビア人である、だから麻薬に関与している可能性がある、それがなくてもそもそもいやなやつである、などの理由で告発がまったく相手にされない、ということになり、一方ヴィクター・カーショウの金でよろしくやっていたダニエル・ルーゴほかの一味はヴィクター・カーショウが生存していることを知って再度殺害を決意するが、病院から抜け出したヴィクター・カーショウは私立探偵エド・デュボイス3世に連絡を取る。
1995年にマイアミで実際にあった信じられないほど素人じみていて頭が悪くて要領を得なくて笑うに笑えないほど滑稽な事件をていねいに再構築していて、意外なくらいに、と言っては失礼かもしれないが、おもしろい。マイケル・ベイはマイアミと相性がいいのだろう。SWATが出動してヘリコプターが飛ぶとやっぱりマイケル・ベイなところもこの映画ではきれいな対照性を発揮している。
主犯格のダニエル・ルーゴがマーク・ウォールバーグで、たぶんスーツだと思うけれど不気味なくらいに筋肉をつけて、動揺すると筋トレを始める頭の悪い役を実に見事に演じている。イエス一直線のポール・ドイルがドウェイン・ジョンソンで、支離滅裂なキャラクターにものすごい存在感を与えている。誘拐されるヴィクター・カーショウはトニー・シャルーブで、このひととしては珍しいくらいにいやなやつを演じているけれど、はまりぶりは半端ではない。三人を追いかける私立探偵がエド・ハリスで、これもいい感じ。主人公を悪の道に引きずり込む自己啓発セミナーのホストがケン・チョンで、これは見たまんまいかがわしい。
Tetsuya Sato