Behind Enemy Lines
2001年 アメリカ 106分
監督:ジョン・ムーア
NATO軍が撤退を始めたばかりのボスニアでアメリカ海軍のF-18がセルビア軍に撃墜される。それというのもF-18が通常の偵察ルートから逸脱してセルビア軍がまさに虐殺をおこなっている森の上空を飛行し、その上に撮影までもおこなったからであった。搭乗していたパイロット及びナビゲーターは脱出に成功するが、パイロットは重傷を負って動けない。そこでナビゲーターひとりが山に登って空母カール・ヴィンソンと連絡を取ろうとしていると、置いてきたパイロットはわらわらと出現したセルビア軍兵士によって取り囲まれ、あっという間に射殺されてしまう。セルビア軍による虐殺の秘密を隠蔽するためであろうと考えられるが、その有様を目撃したナビゲーターが悲鳴をあげて逃げ始めると、セルビア軍が二手に分かれて追いかけてくる。片や装甲車を連ねた大部隊、片や狙撃用ライフルを抱えた怪しいアディダス男である。二手に分かれたのはセルビア軍内部に対立があったからであったが、なぜわざわざ対立して要領の悪い思いを味わっているのか、そのあたりについての説明はない。たぶん、ただ対立していた、というだけであろう。さて、ナビゲーターは山をひた走って救出の会合点に到達するが、ここで空母から恐るべき事実を伝えられる。政治的な理由から救出は来ないので、安全地帯まで自力で脱出するしかないのであった。それというのもF-18が偵察ルートから逸脱していたからであったが、悪いのは逸脱した本人ではなくて、逸脱したことを非難する提督なのである。航空団司令は提督の配下にあって、部下の身を案ずるあまり自らの苦悩をべらべらと喋り始める。そして最後には提督の命令を無視して海兵隊に出撃を命じ、自ら陣頭に立って救出におもむくのである。もちろん決死の覚悟であったが、それでも提督への遠慮があったのであろう、カール・ヴィンソンの格納庫には立派なシーホークがごろごろしていたのに、空母から飛び立つのは古めかしいヒューイなのであった。さっきまでなかったヒューイが三機もどこから現われたのかと気にしていると、救出部隊はボスニアの山岳地帯に侵入し、そこでセルビア軍に包囲されているナビゲーターを発見する。蛮族のようなセルビア軍の前に合衆国海兵隊のヘリコプターが姿を現わす。ヒューイのロケット砲が、ミニガンが火を噴いて蛮族の兵士たちを一掃する。ナビゲーターは脱出に成功し、セルビア軍による虐殺の証拠も回収された。素行に問題のあったこのナビゲーターは除隊申請を取り下げて海軍に残る決意をかため、提督の命令に背いて救出を強行した航空団司令は閑職へと飛ばされる前に雄々しく退役を決意するのであった。逃げる主役がオーウェン・ウィルソン、司令官がジーン・ハックマン。スロバキア・ロケ。
Tetsuya Sato