2013年8月10日土曜日

パンズ・ラビリンス

パンズ・ラビリンス
El Laberinto del fauno
2006年  メキシコ・スペイン・アメリカ 119分
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ

1944年のスペイン。少女オフェリアは臨月の母親とともに町を離れて山間を進み、継父ビダル大尉の任地に移り住む。ビダル大尉は近くにはいてほしくない種類のマチズモで固まった軍人で、妻の腹のなかにあるのは息子であると確信し、異常なまでの冷酷さで共和制の残党狩りにあたっている。オフェリアはビダル大尉に最初から反発し、妖精の導きによって家の裏手にある迷路を訪れると、そこにいたパンから自分が実は魔法の国の王女であったことを知らされるので、魔法の国へ戻るためにパンから与えられた三つの試練に立ち向かう。
三つの試練は少女オフェリアと継父ビダル大尉を取り巻く状況に見事に重なり合い、現実の状況が非情でグロテスクならば、ファンタジックな試練の中身もまた非情でグロテスクで、しかもそのグロテスクさのなかにグロテスクな現実が回収されている。
『デビルズ・バックボーン』よりも遥かに暗く、視覚的に厚みがあり、全編に漂う陰鬱な雰囲気と緊張感がすさまじい。ギレルモ・デル・トロはこれで傑作を作り上げたのは間違いないが、絶え間のない緊張と暴力には少々疲れる。ところでビダル大尉率いる部隊が馬にまたがって山を駆け上がる場面が何度かあるけれど、このときの馬の登坂性能には感心した。 

Tetsuya Sato