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ゾンビの軍団は復活系魔法玉による広域攻撃を受けて壊滅した。魔法玉から照射された強力な生の波動がゾンビをゾンビたらしめていた死を否定したために、ある者はただの土くれとなり、ある者は塵となって崩れ落ち、あるいは復活を果たして人間に戻った。攻撃をまぬかれた少数は退却を試みたが、同様に退却中のオークの集団に遭遇して首を落とされ、なおも抵抗を続けるロボットたちのブラスターに焼かれ、味方であるはずの革命派武装勢力からもガソリンをかけられ火をつけられた。警官隊と国境警備隊は遠距離から頭部を狙って狙撃を続け、どうにか掩蔽物を見つけて逃げ込むと今度は一般市民が鉈や斧を手にして襲いかかった。
「一般市民なんかじゃなかった」とピュンは言った。「革命騒動に便乗して暴動を起こして、その辺で略奪をしていた奴らだよ。集団でうろついて、人間だろうがゾンビだろうが見境なしに襲ってた。ガソリンをかけて火をつけたのも、たぶん奴らじゃないかと思ってる。ミュンは奴らを使ってたんだ。理念はたいそうなものだったけど、理念のためならどんな暴力も許されるってのがミュンの考え方だった。もっとテロを、って、あのおっさんが学生たちに吹き込んでるのを見てるんだ。学生たちは鼻をふんふん鳴らしてうなずいてた。ちょっと気味が悪いって思ったよ。ゾンビをやってると、なんていうか、ドグマがだめになるんだよ。感性的に相容れないっていうか、とにかくとても不自然な感じがする。そう、自然に反してるって感じがするんだ。いちおう理由があってつきあったけど、奴らを好きにはなれなかったよ。で、あの有様だったし、仲間もいなくなったんで、俺は投降した。本当に白旗を上げたんだ」
警官隊がピュンを囲んだ。
「降伏する」
両手を上げてピュンが言った。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
「一般市民なんかじゃなかった」とピュンは言った。「革命騒動に便乗して暴動を起こして、その辺で略奪をしていた奴らだよ。集団でうろついて、人間だろうがゾンビだろうが見境なしに襲ってた。ガソリンをかけて火をつけたのも、たぶん奴らじゃないかと思ってる。ミュンは奴らを使ってたんだ。理念はたいそうなものだったけど、理念のためならどんな暴力も許されるってのがミュンの考え方だった。もっとテロを、って、あのおっさんが学生たちに吹き込んでるのを見てるんだ。学生たちは鼻をふんふん鳴らしてうなずいてた。ちょっと気味が悪いって思ったよ。ゾンビをやってると、なんていうか、ドグマがだめになるんだよ。感性的に相容れないっていうか、とにかくとても不自然な感じがする。そう、自然に反してるって感じがするんだ。いちおう理由があってつきあったけど、奴らを好きにはなれなかったよ。で、あの有様だったし、仲間もいなくなったんで、俺は投降した。本当に白旗を上げたんだ」
警官隊がピュンを囲んだ。
「降伏する」
両手を上げてピュンが言った。
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