2016年5月9日月曜日

トポス(172) ギュンはヒュンを発見する。

(172)
「戦闘がいよいよ王宮に迫ったので」とギュンはいつも話していた。「わたしは自分の部隊を率いて出陣した。わたしの部隊と言ってもたった一個小隊ほどの規模だった。わたしの格からすれば師団規模かそれ以上の編成がふさわしかったが」とギュンはいつも話していた。「最精鋭の部隊だとネロエは言った。言われてみればたしかにきびしい面構えをした男たちの集団で、前にわたしが使った二流どころの傭兵たちとはあきらかに様子が違っていた。王宮の外に出るとわたしはすぐに魔法玉を使い始めた。わざわざ変身する必要などないし、実を言えば変身に必要なパワーがまだ戻っていなかった。邪悪な黒い力が大気の流れを乱して再充填を邪魔していたのだ。だが問題はない。ロボットどもには雷撃系の魔法玉で十分に対処できた。オークどもは属性がないので攻撃系の魔法玉ならなんでも効いた。トロールも同様だ。ドラゴンは重力攻撃系の魔法玉で叩き落とし、ゾンビの群れは復活系の魔法玉で昇天させた。意外と言えば意外だが、敵はそこまでの戦闘で物理攻撃に慣れすぎていて、わたしが魔法玉を使うことをまったく予想していなかったようだ。そしてわたしが実に適切に、驚くほどすばやく魔法玉をあやつるので、わたしの部隊の兵士たちは一人残らず驚いていた。実際、わたしは魔法玉の専門家であり、魔法玉を使わせればわたしの右に出る者はない。主要な敵にはわたしが対処し、甘い考えを抱いた学生どもにはわたしの部下が実弾を浴びせて現実を教えた。我が軍の勝利だった。わたしの勝利だった。だが勝利という美酒を味わう暇はなかった。わたしはヒュンを見つけたのだ。羽根飾りがついた帽子をかぶり、剣を抜き、ショットガンを持った女をしたがえていた。俺は運命を受け入れている、とヒュンは叫んだ。俺は世界を救う英雄になる、とヒュンは叫んだ。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ、とヒュンは叫んだ。するとわたしの部下たちがヒュンに向かって敬礼した。それだけではない。わたしにも、このわたしにもヒュンに敬礼するようにうながしたのだ。わたしは敬礼する代わりにスーパーグラスを取り出した。パワーの関係から変身できる時間は数分に限られていたが、ヒュンを踏みつぶすだけなら十分だった」

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