2015年3月2日月曜日

アメリカン・スナイパー

アメリカン・スナイパー
American Sniper
2014年 アメリカ 132分
監督:クリント・イーストウッド

テキサスの田舎の生まれで父親から古めかしい教育を受けて、良くも悪くも伝統的なテキサス男に成長したクリス・カイルは文字通りのカウボーイになってロデオの技を競っていたが、98年のアメリカ大使館爆破事件をきっかけに祖国への貢献を考えて海軍に入隊するとシールズの隊員として年齢的に遅いスタートを切り、狙撃手としてファルージャに派遣されるとそこで格別な才能を発揮して英雄となり、合計四回の前線勤務を通してアルカイダの狙撃手と対決し、退役してからは家族のために内面の葛藤を克服する。 
実在の狙撃手クリス・カイルの回顧録(未読)にもとづいているようだが、エンドロールではっきりと宣言しているように、映画の内容はわかりやすいお話としてまとめられており、おそらくはその結果なのか、主人公は古典的な誇り高い個人として規定され、国家と接続されていてもその点で最後まで一貫した行動を取ることになる。まったくモダンな人間ではないし、そのまったくモダンではない人間が放り込まれた戦場はどこか西部劇のような様相を帯びることになり、それは最終的に砂塵を前にした一騎打ちに結実する。主人公が誇り高い個人であったとは言いにくい『ハート・ロッカー』とは対照的であり、意味の有無は別としてもまず英雄を認めようという試みは『ハートブレイク・リッジ』を思い出させる。ブラッドリー・クーパーが筋肉男になって登場し、初めはブラッドリー・クーパーに見えなかった。 

Tetsuya Sato