The Musketeer
2001年 ドイツ/ルクセンブルグ/アメリカ 105分
監督:ピーター・ハイアムズ
ピーター・ハイアムズによる三銃士物。幼い頃目の前で両親を惨殺されたダルタニアンが成長してから復讐の相手を求めてパリに赴き、銃士隊のいつもの面々と何やらしながら王妃の問題を解決していく。
デュマとはほとんど関係がない。ダルタニアンの敵役というのがティム・ロスで、これがもう、ただ悪い。一応リシュリュー卿の手下ということで悪いことをしているが、そのうちにどんどん暴走を始めて血を見るためならば手段を選ばないというモードに突入していく。憐れみはないし、子供は嫌いだし、地獄落ちを覚悟していて怖い物が何もないという役をティム・ロスが嬉しそうにやっていた。
王妃がカトリーヌ・ドヌーブでこれも百姓女に変装したりして、実に嬉しそうにやっていた。特筆すべきなのはこの二点と、ハイアムズ自身による撮影がしばしば驚くほど美しかったこと、そして剣劇の目茶苦茶ぶりである。まず、剣が猛烈に早い。しかも、「どこでもチャンバラ」状態なのである。天井にはまり込んで斬り結ぶし、塔の壁面を登っていくと、上から敵兵がロープにぶら下がって降りてきて、壁面でチャンバラを始めてしまう。それでもまだ足りないと思ったのか、クライマックスの酒蔵での戦いでは無意味なほどのアクロバットが展開する。スタントを担当したのは上海雑技団であろう。ストーリーがアクションのための辻褄合わせになっていて、しかもそのアクションにとめどがないという点では、典型的なハイアムズの作品である。たぶん、リズム感が悪いのだろう。サービス精神が裏目に出るという不幸な性質の監督だが、それでも一応の水準に達しているとすればやはりティム・ロスの功績が大きいと思う。アップテンポのチャンバラ場面、コメディ・フランセーズから借用した衣装も見るに値する。
Tetsuya Sato