The Secret Life of Walter Mitty
2013年 アメリカ 114分
監督:ベン・スティラー
『LIFE』誌で写真のネガを管理しているウォルター・ミティは空想癖の持ち主で、ひとと話をしている最中にもときどき向こうの世界に出かけていたが、『LIFE』誌の休刊が決まって最終号の表紙をかざる写真のネガがなぜか見つからないことに気がついて、写真家ショーン・オコンネルの手元にまだあるのではないかと考えて所在のわからない写真家のたずねてグリーンランドへ渡り、一日のあいだにヘリコプターから落ちる、サメと戦うなどの冒険をして、さらにアイスランドへ渡ってつづら折りの道をスケートボードで駆け抜け、火山の爆発に出会い、アメリカへ戻ると新たな手掛かりを手にアフガニスタンへ渡り、ヒマラヤ山中へ分け入ってそこで写真家を探し出して真相を知る。
ジェームズ・サーバーの短編の再映画化。とはいえここに登場するウォルター・ミティはそもそもの気質がバックパッカーであり、空想は本性に反して日々を送る自分に対して与えられた抜け道であり、中盤から始まる旅は自己抑制から抜け出すにつれて輝くような解放感を帯びていく。そしてそこに展開する光景は『LIFE』誌を背景に選んだことからあきらかなように、すぐれてフォトジェニックであり同時にグラフィカルでもあり、視覚的な豊かさには息を呑まずにはいられない。むしろ、よほどの自信がなければこの設定は選択できなかったのではあるまいか。
ベン・スティーラーは60-70年代的とも言える楽観的な精神風土を引用しながら自己回帰の物語を美しく仕上げ、自らきわめて魅力的に演じている。『トロピック・サンダー』を見たとき、その構築力の確かさに感心させられたが、ここではさらに数歩前進している姿を見ることができる。共演のクリステン・ウィグ、シャーリー・マクレーン、ショーン・ペンもすばらしい。