Pinocchio
1940年 アメリカ 88分
監督:ハミルトン・ラスケ、ベン・シャープスティーン
ゼペット爺さんに作られた操り人形のピノキオはゼペット爺さんの願いを聞いた妖精の手によって魂を得て、本当の子供になるために勇敢で正直になろうとするが、支えの筈の良心はうっかり見過ごしてしまいそうなコオロギだし、すぐにキツネとネコの魔手が忍び寄り、まず操り人形のショーに売られ、続いてお楽しみの島に売られてあやうくロバにされて塩鉱へ転売されそうになり、なんとか逃げ出して家へ戻ると今度はゼペット爺さんがクジラに呑み込まれてしまっている。
小さい頃、ディズニー版ではなく、カルロ・コッローディの原作に基づく幼児向けのリライト絵本を持っていて、その挿し絵というのが絵ではなくて人形を使った写真になっていて、むやみと暗い雰囲気がとにかく不気味で怖かった、という記憶があって、それ以来、ピノキオというのはわたしの心の暗部にひそむ恐怖に連なる存在となり、というわけでディズニー版は紆余曲折を省略し、話もおおむね楽観的になっているものの、ピノキオに襲いかかる現実世界の暴力があまりにも露骨で、この歳になってもやっぱり怖いと思うのである。
で、それはそれとしてアニメーション作品としては、これはやはり傑出していて、ピノキオが魂を得た翌朝、上空をハトが舞う町の俯瞰から登校するこどもたちの姿を追い、最後にゼペット爺さんの戸口まで続くワンショットはものすごいと思うし、ストロンボリ一座の人形の動きはすばらしいし、クライマックス、クジラが暴れる場面の波の動きには思わず見とれる。
Tetsuya Sato