Fail-safe
1964年 アメリカ 107分
監督:シドニー・ルメット
ICBMがまだ十分に配備できなかった時代、戦略核の主要な運搬手段は爆撃機であった、ということで戦略空軍の爆撃機は編隊を組んでいつも空を遊弋していて、戦争の気配を察知するとフェイルセイフ・ポイントと呼ばれる空域へ接近を開始する。そして気配が本物になった瞬間、ここからさらにロシアへと潜入して爆弾を落とすことになっていて、攻撃の命令は音声ではなくてフェイルセイフ・ボックスと呼ばれる暗号受信機からコードで伝えられる。
ある日、フェイルセイフ・ポイントを旋回していた爆撃機の一編隊が攻撃コードを受信してロシアに接近を開始する。標的はモスクワ。攻撃コードは機械的な故障で発信されたようだけど、原因はわからない。大統領は音声で命令を撤回するが、爆撃機の乗員は訓練に基づいて帰還を拒絶する。ロシア側の迎撃機による撃墜は失敗する。生き残った一機がモスクワに到達し、水爆を投下する。大統領はこれが事故であることをロシアに証明するため、自ら命令を下してニューヨークに水爆を投下する。あわせて一千万人の犠牲で、核戦争は回避される。
大統領がヘンリー・フォンダ、政治学者がウォルター・マッソー。現実の状況を背景にしたグロテスクな話だ。映画は淡々とした会話劇で構成されており、それを映し出すモノクロームの映像がどことなく寒さを感じさせる。ある種の名作には違いないが、衝撃的な内容に負けているのか、登場人物が多すぎるせいなのか、緊張が確実に持続しないところが難ではある。
Tetsuya Sato