2015年9月9日水曜日

Plan-B/ 斧

S7-E32
 昔むかし、海と空の向こうの国に働き者の木こりがいた。いつも朝早くから働いて、昼になると泉のほとりで弁当を食べて、午後も日暮れ時まで働いた。その日も朝から働いて、泉のほとりで弁当を食べた。そして午後の仕事に取りかかろうとして立ち上がると、斧が泉に滑り落ちた。あわてて水に手を差し入れたが、どこをどう探しても水を濁らせるばかりで手ごたえがない。困り果てて、膝を突いて嘆いていると、水を割って泉の精が現われた。金の斧を差し出して、おまえが落としたのはこの金の斧かとたずねたので、木こりは違うと言って首を振った。すると泉の精は銀の斧を差し出して、おまえが落としたのはこの銀の斧かとたずねたので、木こりは違うと言って首を振った。すると泉の精は木こりの斧を差し出して、おまえが落としたのはこの斧かとたずねたので、木こりはそうだと言ってうなずいた。泉の精は木こりに斧を渡した。木こりはその斧を振るって日暮れ時まで働いて、家に帰ると泉で起こったことを女房に話した。すると女房はいきなり立ち上がってスープが入った鍋をつかんだ。おまえがなくしたのは金の斧だ、おまえがなくしたのは銀の斧だ、と叫んでから、重たい鍋を木こりの頭に打ちつけた。

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