2015年9月12日土曜日

キングスマン

キングスマン
Kingsman: The Secret Service
2014年 イギリス 129分
監督:マシュー・ヴォーン

サヴィル・ロウにある紳士服店キングスマンの正体は大富豪(複数)の遺産で運営される秘密組織で、その秘密組織でエージェントをしているハリー・ハートはアルゼンチンで殺害された同僚の後釜として17年前に殺害された同僚の息子エグジーを選び、エグジーがほかのエージェント候補とともに振り落とし試験を兼ねた訓練をうけるあいだ、ハリー・ハートはアルゼンチンの事件を追いかけてIT業界の大富豪リッチモンド・ヴァレンタインにたどり着き、リッチモンド・ヴァレンタインの陰謀をあばきにかかると、そのリッチモンド・ヴァレンタインは各国の要人と会談を重ねて国際的な陰謀の仕上げにかかり、訓練を終えたエグジーがスーツに身を包んでリッチモンド・ヴァレンタインの陰謀に挑戦する。 
ハリー・ハートがコリン・ファース、エージェントのマーリンがマーク・ストロング、キングスマンの指揮官アーサーがマイケル・ケイン、リッチモンド・ヴァレンタインがサミュエル・L・ジャクソン、誘拐される大学教授が久しぶりのマーク・ハミル。
結論から言うと、やはりマシュー・ヴォーンとは相性が悪い。ショービジネスのラインで製造された商品としては十分に水準をクリアしているが、商業性の観点からよく吟味されたありものの貼りあわせであり、トレイ・パーカーの『チームアメリカ ワールドポリス』とほぼ同じ話だとすれば、煩悩と幼児性を剥き出しにした『チームアメリカ』のほうが作家性においてはるかに優れている。見方を変えればマシュー・ヴォーンは作家性を放棄するところから出発しているわけで、そこに作家性を求めるこちらのほうにそもそも無理があるということにもなるが、仮にそうだとしてもわたしにはユニクロのカラーバリエーションのほうがよほど挑戦的に見える。マシュー・ヴォーンの作品のなかではおそらくいちばんムラがなくて、さしあたり退屈しないという美点はあるが、暴力表現をぬるめに処理して万人受けを狙うあざとさが最初から最後まで見えるので、あまり居心地はよろしくない。あまりにも居心地が悪いので終盤に登場するマグプル マサダの冬季迷彩までが不快に見えてくる(それにしてもあのリアジェットはどうやって離陸したのか?)。作り手の本音がもしどこかに出ているとすれば、それはハリー・ハートがアーサーに対して言う貴族の終了宣言であり、それを引き継ぐのがサヴィル・ロウのオーダーメイドとしてはひどく無様なスーツであり、そのスーツの上にくっついたひどく無様なウィンザーノットなのではあるまいか。 
Tetsuya Sato