2015年9月11日金曜日

ワルシャワ、二つの顔を持つ男

ワルシャワ、二つの顔を持つ男
Jack Strong
2014年 ポーランド 107分
監督:ヴワディスワフ・パシコフスキ

ポーランド軍将校でワルシャワ条約機構で働くリシャルド・ククリンスキはプラハの春に対する介入シナリオをソ連のために作成したことで自分の心がソ連の醜い仮面をかぶっていると感じるようになり、1970年の造船所労働者の政治蜂起に対して軍が実力で介入したことでポーランド軍もまたソ連の犬であるという不快な事実を思い知らされ、愛国者としての感情からボンのアメリカ大使館に手紙を送ってアメリカの諜報機関と接触するとCIAの協力者となってソ連及びワルシャワ条約機構の最高機密(つまり、ポーランドの、ではない)をまったくの無償で提供するという、言わば英雄的行為を続けてカーター大統領から外国の軍人としては初めて銀星勲章を授与されたりするものの、なにしろ提供している情報がブレジネフですら知らない極秘の戦争計画だったりするものだからソ連もスパイがいることに気がついて、ブレジネフですら知らない極秘の戦争計画を立案した将軍は怒り狂ってスメルシュ(ククリンスキのお友達)を叱咤し、ポーランドの対諜報組織(ククリンスキの勤務先)もついに内偵を始めるので、1981年、ククリンスキは家族とともにポーランドからの脱出を試みる。 
実話の映画化で、原題の『ジャック・ストロング』はCIAがククリンスキに与えたコードネーム。監督はアンジェイ・ワイダの『カティンの森』の脚本を担当したヴワディスワフ・パシコフスキ。演出自体に格別の冴えはないものの、構成には工夫があるし、当時の状況をポーランド軍高級将校の視点から丹念に再現するという目論見は達成されていて、クライマックスの脱出ではそれなりにサスペンスも盛り上がり、ワルシャワ市内での地味なカーチェイスも悪くない。 



Tetsuya Sato