S7-E31
|
鍵
|
昔むかし、海と空の向こうの国で旅人が貧しい農夫の家の戸を叩いた。旅人が一夜の宿を求めると、貧しい農夫とその妻は旅人を迎えて食事を差し出し、床に寝床を整えた。農夫は不思議な鍵の持ち主だった。この鍵があればどんな扉も開けることができると農夫は言った。この鍵のほかにおれが持っているのは鍋と鍬と女房だけだと農夫は言った。翌朝、旅人は農夫に別れを告げて旅を続けた。町へ出て、そこで王様の客になった。旅人が鍵の話をすると、王様はその鍵を盗んでこいと命令した。しなければ殺すと脅されて、旅人は農夫の家に戻って鍵を盗んだ。旅人が鍵を届けると、王様は農夫の鍋を盗んでこいと命令した。しなければ殺すと脅されて、旅人は農夫の家に戻って鍋を盗んだ。旅人が鍋を届けると、王様は農夫の鍬を盗んでこいと命令した。しなければ殺すと脅されて、旅人は農夫の家に戻って鍬を盗んだ。旅人が鍬を届けると、王様は農夫の女房を盗んでこいと命令した。しなければ殺すと脅されて、旅人は農夫の家に戻って女房を盗んだ。すべての持ち物を奪われたので、農夫は山に登って天を呪うと崖の縁から身を投げた。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.