S5-E31
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繭
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夜のあいだになにかがそこで繭になった。ひとが一人、かろうじて入れるくらいの大きさがある。床や壁に白い糸を引っ張って、必死でしがみついている。手で触れてみた。少しばかり熱を帯びている。叩いてみた。返事はない。ハサミを使って切ってみた。赤黒い水が流れて繭が震えた。切れ目を広げてなかを見た。剥き出しの肉の繊維のあいだで黒い瞳が動いていた。繭をさらに切り裂いた。すべてが未満の状態で、正体がまるでわからない。壁からなんとか引き剥がして、袋に入れてごみに出した。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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