S6-E06
|
砂丘
|
藍色の空を背にそびえる砂丘の上に白銀の髪を束ねた女が腰を下ろして音に耳を凝らしていた。背中をわずかに丸めて両の耳に手をあてがって、目を閉じて音に聞き入り、音の変化を胸に刻み、音の流れに身をまかせた。砂丘の上で夜を迎えて星空を見上げ、星の音に耳を澄ませてまどろみながら朝を迎えた。女は砂漠の声と星の声を聞き分けた。とうの昔にひとの言葉は忘れていたが、砂漠の民は女の言葉を理解した。砂漠の民は女の前に遠くの井戸で汲んだ水と山羊の乳から作ったチーズと短冊に切った干し肉を置いた。女を囲んで腰を下ろし、女の声に聞き入って、目を閉じて時を過ごして、おのれの影を砂に重ねた。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.