S6-E13
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泉
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月の光が森の木々に影を投げ、そよぐ風が泉の水面に波を立てた。白い寝巻き姿の女が木を回って顔を出し、落ち葉を素足で踏みながら泉に向かって近づいていった。風が女の顔を撫でた。髪が乱れ、月の光が毛先を照らした。光がにじむ。女が腕を広げて回り始めた。足をせわしく踏み替えながら、腕を大きく広げて回り始めた。風が吹いた。落ち葉が舞い上がった。女は空に向かって心地よく笑いの声を放ちながら、腕を大きく広げて回り続けた。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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