2015年6月13日土曜日

ブレスト要塞大攻防戦

ブレスト要塞大攻防戦
Brestskaya krepost
2010年 ベラルーシ/ロシア 138分
監督:アレクサンドル・コット

バルバロッサ作戦開始前日の1941年6月21日土曜日から戦闘を開始して要塞守備隊がほぼ全滅するまでの五日間を淡々と再現していて、その細部にわたる再現ぶりがかなりすごい。どこかしら不穏ながら警戒心を忘れた土曜日から始まり、その土曜日の深夜にドイツの列車から続々と降り立つドイツ軍の工作部隊(NKVDの制服を着ている)、日曜日早朝の川面に映る戦闘機の編隊、爆撃を受けて倒壊する建物、逃げ惑う軍人、市民、転がる死体、退路に構築されたドイツ軍の機銃陣地、ばたばたと倒れる民間人、指揮系統を失ったまま反撃に出る赤軍、三号戦車を押し立てて進むドイツ軍、一門だけ残った野砲による反撃、たった一機で現われた友軍機といきなり始まる空中戦を見上げる兵士たち、民間人を盾に投降を迫るドイツ軍、シュトゥーカの爆撃、ちぎれた腕や脚、水の不足、死体を蹂躙する戦車、連携が取れないまま夜襲をかけて大損害を受ける赤軍、投降する民間人、二トン爆弾による壊滅的な破壊、かつて軍楽隊の少年であった語り手が、その場で生きていた人間の顔を思い出しながら場面と場面とをつないでいく。絶望的でむごたらしい。


Tetsuya Sato