S3-E20
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遊戯
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その国は生産基盤のほとんどを国外に追い出していた。中間層が完全に消滅していたので、その国には国外の生産拠点から利益を受け取って優雅に暮らす富裕層と、生産基盤を失って苦労して暮らす貧困層だけが残されていた。そして人口の大半を占める貧困層は人口の五パーセントに満たない富裕層に対して常に怒りを感じていたので、富裕層は貧困層の怒りを和らげるために年に一度、盛大なゲームをおこなっていた。そのゲームにはあれやこれやのルールがあると一応の説明はあったものの、実際にゲームが始まると貧困階層から選ばれた若い男女がルール無用で殺し合った。主催者側は貧困層に希望を与えるためと称して殺し合いを煽り立て、わずかに残ったルールも主催者側の都合で変更された。大声で何度も何度もゲームだと言い張っても、そんなものはゲームではない。ひとをばかにするにもほどがある。それともひとをばかにしていることがわからないほど、やつらは頭が悪いのか。貧困層は怒りを爆発させて富裕層を滅ぼした。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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