S3-E15
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石
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男は石を集めていた。週末を待って近くの山や川へ出かけていって、コレクションにふさわしい形の石を探した。気に入った石が見つかるとそれをポケットに入れて持ち帰って、自分の部屋の小さな陳列棚に並べていた。男はその日も石を一つ持ち帰って、それをいつものように棚に入れた。そして翌日の朝、男は棚の前に立って驚いた。一つを残して、集めた石が消えていた。たった一つ残った石には、見覚えがなかった。男は近所で適当な石を探してきて、それを残った石の隣に置いた。翌日の朝まで待って様子を見ると、近所で見つけた石は消えていて、もう一つの石は形が変わっていた。前夜までは平たい虫のような形をしていたが、それが少しばかり大きくなって、うずくまった獣のような形になっていた。気がついたときには、男は石のために石を探すようになっていた。棚のなかの石は次第に大きくなっていった。形はひとの姿に近づいていった。そのうちに棚には収まらないほどの大きさになり、男は石に自分の寝台を明け渡した。寝台の上に移された石は、間もなくそこで産声を上げた。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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