2013年2月26日火曜日

あなただけ今晩は

あなただけ今晩は
Irma La Douce
1963年 アメリカ 146分
監督:ビリー・ワイルダー

パリ。生真面目でうぶな警官ネスターは娼婦ばかりのカサノバ街の担当となり、法律違反が堂々とまかり通っているのを目の当たりにした結果、自身の判断で一斉検挙に取りかかり、捕えた客のなかに上司の警部が混じっていたことから職を失う。行く宛てのないネスターはカサノバ街を訪れ、諸般の事情で娼婦イルマのヒモとなるが、ネスターはイルマを愛するあまり、イルマに客を取らせまいとして、謎の英国紳士に変装してイルマの客となる。
ネスターがジャック・レモン、イルマがシャーリー・マクレーンで、どちらも持ち味が実にうまく引き出され、ビリー・ワイルダーとI.A.L.ダイアモンドによる脚本は例によって無駄がなく、小道具や通りすがりの脇役にいたるまでこまかく配慮されている。ルー・ジャコビ扮するカフェのマスターが魅力的で、事実上の狂言回しを引き受けているが、顔を出せば得体の知れない理屈を振り回し、しかもその過去は経済学の教授だったり軍人だったり弁護士だったり、あるいは産婦人科の医師だったりと、思いつくままに広がってどうにも得体の知れないことになっている。シャンパンのボトルを抱えて眠りこけているイルマの愛犬コケットもいい。どの場面も手間をかけてていねいに作り上げられていて、見ていて幸せになるコメディである。精密に作り込まれたカサノバ街のセットもすごい。


Tetsuya Sato