Sabrina
1954年 アメリカ 113分
監督:ビリー・ワイルダー
大富豪ララビー家の長男ライナスは巨大企業グループを率いる実業家で、その弟デヴィッドは間抜けな結婚で失敗を繰り返すプレイボーイであったが、ララビー家の運転手フェアチャイルドの娘は運転手の娘とも思えぬサブリナという名前を持ち、ララビー家の次男デヴィッドに恋心を抱いていた。そこでフェアチャイルド氏は「月に向かって手を差し伸べるな」と娘を諭し、料理修業のためにパリへ送るが、サブリナはパリでサン・フォンタネル男爵と知り合い、具体的な説明はまったくないものの、どうやら女修業を終えて「月のほうに手を伸ばしてもらう」ために帰国する。丁度このときデヴィッドはララビー家の一層の発展のためにライナスが仕掛けた政略結婚を控えていたが、見違えるほど美しくなったサブリナに夢中になってしまうので、ライナスは間抜けな事態を回避するために無理矢理デヴィッドを負傷させる。そして非情なたくらみを抱いてサブリナに近づいていくが、世に言うところのミイラ取りがミイラになり、という話である。
サブリナに扮したオードリー・ヘップバーンは特にその表情が魅力的。ハンフリー・ボガートは女っ気のない中年の実業家に扮して不思議なくらいにはまりまくり、ウィリアム・ホールデンは髪を金色に染めて現われ、言われみればプレイボーイに見えなくもない。ビリー・ワイルダーの危なげのないがっちりとした文体は鮮やかにサブリナの心象を描き出し、また語り口には無駄がなく、しばしばコミカルなダイアログはきわめてよく考慮されている。
Tetsuya Sato