Jack Reacher
2012年 アメリカ 130分
監督:クリストファー・マッカリー
ピッツバーグで狙撃用のライフルを使った無差別殺人事件が起こり、警察は現場で発見した遺留品から犯人をつきとめて逮捕するが、黙秘する犯人はジャック・リーチャーを呼ぶように求め、事件を担当する刑事と地方検事がジャック・リーチャーなる人物を調べたところ、元陸軍将校で戦争の英雄で憲兵として犯罪捜査にも通暁していて、ただしすでに軍を退役して所在不明であることがわかり、そのような人物をどのように呼べばよいのかを思案しているとそこへ当のジャック・リーチャーが現われ、犯人の弁護士ヘレン・ロディンの要請を受けて事件を調べ始めると待ち構えていたようにいかにもありそうな陰謀が浮かび上がり、けっこうな面構えの悪党どもが顔を出す。
見ているうちにジョン・フリンのきわめてよくできた新作を眺めているような気分になってきた。人物造形やダイアログなどの雰囲気が70年代のB級ハードボイルド映画によく似ている。トム・クルーズ扮するジャック・リーチャーは昔だったらリー・マーヴィンかロバート・デュヴァルがやっていた役かもしれない(それを言うとロザムンド・パイクはカレン・ブラックあたり、ということになるのであろうか)。そう思うとこの配役は少々重さを欠くような気もするが、それはそれとしてトム・クルーズはこのキャラクターを非常にシャープで魅力的に演じているし、最終的に明らかにされる正義感としてふるまいを見るとトム・クルーズというキャラクターによって初めてバランスが取れているような気もしないでもない。冒頭の狙撃シーン、車載カメラとクレーンを駆使したカーチェイスシーン、クライマックスの採石場の戦闘シーンはちょっとないような見物になっている。特に終盤、助っ人して登場するロバート・デュヴァルが実にいい感じで、老年のスナイパーが敵の銃声に耳を傾けながら目を閉じている様子は尊いとしか言いようがない。陰謀の黒幕として登場する謎のロシア人がヘルツォークで、これがまた異様な迫力を出していた。目配りがよくて、リズムがよくて、これは映画好きが映画好きのために作り上げた好編である。
Tetsuya Sato