The Apartment
1960年 アメリカ 125分
監督:ビリー・ワイルダー
保険会社の社員C・C・バクスターは上司の情事のためにアパートの自分の部屋を貸していて、そのせいで好きな時間に部屋にいることができないばかりか、部屋からもれる音や声で隣人からあらぬ疑いをかけられている。そのバクスターはエレベーターガールのフラン・キューブリックに強い関心を抱いていたが、当のフラン・キューブリックは会社の上級管理職J・D・シェルドレイクの愛人であり、そのシェルドレイクに捨てられたと信じたフラン・キューブリックは、たまたまそう信じた場所が例によってC・C・バクスターの部屋であったため、C・C・バクスターの寝室で大量の睡眠薬を服用し、死にかけているところをてC・C・バクスターに発見される。
よくよく乱れた会社であるなあ、とまず感心するが、映画自体はコメディと呼ぶには痛々しい。上司の要求を断れない男、恋愛運の悪さにどこかで傷ついている女、どうにもうまく噛みあわない二人のあいだの歯車といった大軸に細部が恐ろしく巧妙に埋め込まれていて、しかも、そのコストパフォーマンスが猛烈に高い。登場人物にしても小道具にしても、アパートの構造にしても(部屋の入口、台所の入口、寝室の入口がワンショットに収まるように作られている)、とにかく無駄な部分がないのである。ジャック・レモンは小心さとプライドのあいだで揺れ動く男を好演し、シャーリー・マクレーンの皮一枚下に絶望を隠した顔もなかなかにすごい。
Tetsuya Sato