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S5-E22
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喪失
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大学を出たばかりの若妻は仕事に出かける夫を見送ったあと、ベッドに転がって天井を見上げた。家は海のかなたにある。外国のホテルで天井を見上げて、そそり立つ壁を感じていると、違和感ばかりが募ってきて抜け出したいという気持ちが強くなる。ここは自分の場所ではない、と彼女は感じている。しかし抜け出すこともできなかった。部屋から一歩出れば、外国の風景が押し寄せてくる。どうすることもできなかった。彼女は寝返りを打ち、枕を抱えてまどろんだ。まどろみながら、自分が削られていくのを感じていた。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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