S5-E16
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下水
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それは下水道に潜んでいた。それは選り好みをしなかった。流れてくるものならなんでも食べて、とてつもない大きさになっていた。寝返りを打つと下水の壁が崩れ始めた。様子を見に下りてきた人間はそれの腹に収まった。あまりにも大きくなったので、下水道にいるのが難しくなっていた。地上ではそれに関する噂が流れていた。ワニだと言う者がいたが、ワニではなかった。ヘビだと言う者がいたが、ヘビではなかった。なにかの群体ではないかと言う者がいたが、そうではなかった。それがゆっくりと首をもたげた。しぼんだ口に顎の先が現われた。口が大きくまくれ上がって、向かい合った六つの顎が現われた。それは顎を振り動かして、下水の天井を打ち砕いた。崩れ落ちてくる煉瓦や砂利をものともしないで、それは地上に躍り出た。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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