S5-E03
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月光
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男は自分の小屋で蒸留酒を作って、それを町に運んで売っていた。男の小屋は山奥にあって、そこから町へ出るには地元の者しか知らない道をうねうねと抜けていかなければならなかった。男はできあがった酒を車に積んで、夜中にこの道を下っていった。うねうねしている上にでこぼこしているその道は、目立たない藪をはさんで新しい国道とつながっていた。国道に入るとそこから町までは一直線で、男はここをニトロを使って猛スピードで駆け抜けた。警察が道を見張っていたが、男に追いつくことはできなかった。男はいつも満月の晩を選んでいた。だからその日も満月だった。国道に出ると、すぐに警察が男の車を追いかけ始めた。男はスピードを上げていった。国道をはさむ黒い森が月の光を浴びている。男はニトロを使って一気に警察を引き離した。そこへ間近からすさまじい光が降り注いだ。すぐ脇をなにかが飛んでいた。飛びながら強い光を放っていた。光を放ちながら近づいてきた。男はそれを避けようとした。車が勢いよく横転して、酒の容器が壊れたところに火花が散った。男は一瞬で焼け死んだ。警察が追いついたときには車は炎に包まれていた。そして警官の目の前で、光を放つ円盤型の物体が夜空に向かって消えていった。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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