Signs
2002年 アメリカ 119分
監督:M・ナイト・シャマラン
とある一家がとうもろこし畑に囲まれた古びた家で暮らしている。父親と息子と娘、こどもたちはまだ幼い。同じ敷地にある離れには父親の弟が暮らしている。ある朝、一家は畑に作られたミステリー・サークルを発見する。保安官が呼ばれるが、近所のろくでなしのしわざというわけでもないらしい。屋根には怪しい人影が現われて、追いかけると目にもとまらない速さで姿を隠す。かと思うと飼い犬が突然襲いかかる。ミステリー・サークルはどうやら世界中に出現しているらしい。テレビをつけると、インドからの映像が流れ出す。町の様子も何か変だ。終末への予感に脅えて告解を始める者もいる。一家の父親はかつて牧師をしていたらしい。こどもたちの母親はしばらく前に死んでいるらしい。ベビー・モニターを空に向けると、まるで誰かが会話をしているような雑音が聞こえてくる。UFOの編隊が世界中の空に出現する。ブラジルではホームビデオにエイリアンの姿が写し取られた。人類は侵略を受けようとしているのだ。窓に板を打ちつけて、家族を守らなければならないのだ。父親は信仰を失っている。母親は交通事故で死んだようだ。息子には喘息の発作があり、小さな娘は目の前の水が汚染されていると信じている。独り身の弟はマイナーリーグの元選手で、ホームラン王であり、かつまた三振王でもあり、今はガソリンスタンドで働いている。妻を失った元牧師は反キリスト者のようになって怒りを叫ぶ。そしてついにその夜がやってくるのである。
シャマランの演出は『アンブレイカブル』よりもふてぶてしくなっている。ぎりぎりのきわどさで様々な要素をつなぎあわせ、見た目に危ういバランスを自信に満ちた手つきで時間とともに安定させていく。ジグソーパズルのようなものではまったくない。パズルのピースならば平坦な場所に並ぶだけだが、シャマランの映画は常に起伏に富んでいる。組み合わされた断片が揺らぎもしない物語になる。あまりにもがっちりしているので結末はかなり早い時期から予測できるし、その結末のものものしさはばかばかしくもあるけれど、あまりにもすごいので見ているこちらはついうっかり感動してしまう。筋書きは地球規模だが、あくまでも個人の物語である。大いなる手の中では偶然というものは存在しないのである。つまり神はグラハム・ヘス牧師から信仰を奪い、そしてそれを前よりも一段と輝かしいものとして、再び牧師の胸に返したのであった。やたらと荘重で悲しいという点を除けば話はフレドリック・ブラウンの『火星人ゴーホーム』。
Tetsuya Sato