旅情
Summertime
1955年 イギリス/アメリカ 102分
監督:デヴィッド・リーン
アメリカの独身女性ジェーン・ハドソンは貯金をためて人生で失ったものを取り戻すためにひとりで旅に出てヨーロッパを訪れ、ヴェネチアに到着してペンションの部屋に落ち着くと観光には出かけないでアメリカから持ち込んだバーボンを飲んではあたりを歩くカップルに羨望に満ちたまなざしを向け、ようやく腰を上げてサンマルコ広場を訪れてお茶をしているとそこでもカップルに羨望のまなざしを向け、そこで至近距離から発せられるイタリア男の視線に気づいて自意識過剰になってその場から逃れ、翌日たまたま訪れた骨董品店でゴブレットを買おうとしていると応対に現われたのがそのイタリア男レナート・ディ・ロッシで、あくる日にはジェーン・ハドソンのペンションまで押しかけてきてお茶に誘い、一度は拒んだジェーン・ハドソンも結局は誘い出されることになり、そのままレナート・ディ・ロッシと一気に深い関係になるが、ふとしたことからレナート・ディ・ロッシにが妻子持ちであることを知って激しく傷つき、レナート・ディ・ロッシはジェーン・ハドソンの前に現われるとジェーン・ハドソンの幻想を責め、自分こそがジェーン・ハドソンにふさわしいというようなことを主張するとジェーン・ハドソンもまた現実を受け入れ、二人は相思相愛の関係になってジェーン・ハドソンは一夏のロマンスを思い出にヴェネチアを去る。
ステーキではなくラビオリを食べなさい、は有名な台詞だが、ロッサノ・ブラッツイはどう見てもラビオリではないだろう(サルティンボッカくらいかな)。ダイアログがよくできているし、デヴィッド・リーンの演出は非常にしっかりとしているが、もしかしたらキャサリン・ヘップバーンはややオーバーアクション気味かもしれない。もしかしたらイギリス人の監督がアルプスの南側をまたワンダーランドに仕立てるかわりにアメリカ女性のカリカチュアをヒロインに配置したのかもしれない。
Tetsuya Sato