2014年9月28日日曜日

アレキサンダー

アレキサンダー
Alexander
2004年 アメリカ 173分
監督:オリバー・ストーン

マケドニア王フィリッポス二世の子アレクサンドロスの誕生から王位継承、東征からその死までを老境のプトレマイオスが回想する。
話の継ぎ目にエキゾチックなダンスと宴会、というのはいまさらなかろうと思う。これだけでも作り手の誠意と見識を疑いたくなる。撮影は全体にデザインに乏しく、美術は怪しい。主演のコリン・ファレルは魅力に乏しく、うすばかめいた腑抜けた顔にはいかなる夢想も誇大妄想も感じられない。とはいえ退屈に見える主要な原因は俳優本人よりも想像力の乏しい演出にある。あれだけの短期間にあれだけのことをした、ということは猛烈に忙しかったわけであり、実際のところ、得体のしれない能書きを垂れている暇はなかったのではあるまいか。対するにこのアレクサンドロスは最初から最後まで何かをしているようには見えなかった。おそらくは最初の段階でアレクサンドロスに対する距離感の設定に失敗しているのであろう。同性愛描写も邪魔なだけ。それに比べると母親オリュンピアスはアンジェリーナ・ジョリーの一貫した演技もあってなかなかに魅力的で、そういうことならこちらの主演で『王女メディア』か何かを作ったほうがよほどに面白かった筈である。
独りよがりなだけで見どころのほとんどない映画だが、マケドニア軍やペルシア軍や装備はかなり手間をかけて復元されているように見えた。ガウガメラの戦いのマケドニア式ファランクス、インドの戦闘での戦象など映像で初めて見る光景が登場し、これは興味深かった。とはいえ、残念ながら戦闘場面自体は全般に作りが悪く、状況がほとんど把握できない。特に最後のインドでの戦闘シーン、あの地形であの部隊展開は信じられない。もしヒュダスペス河畔の戦闘のつもりなら渡河作戦だった筈である。


Tetsuya Sato