2014年9月25日木曜日

宮廷画家ゴヤは見た

宮廷画家ゴヤは見た
Goya's Ghosts
2006年 アメリカ/スペイン 114分
監督:ミロス・フォアマン

異端審問所に所属するロレンソ神父は異端摘発の強化を主張して拷問を復活し、その網にかかった娘イネス・ビルバトゥアは拷問によってユダヤ教徒であることを告白する。その事実をロレンソ神父の口から聞かされたイネスの父トマス・ビルバトゥアは拷問による告白の有効性に疑問を抱き、拷問による恐怖はいかなる信仰にも勝るので拷問によって得た告白に真実はないと主張するが、これに対してロレンソ神父は神が力を与えてくれるので信仰は拷問による恐怖に勝ると反論し、それならば、ということでトマス・ビルバトゥアは神父を捕らえて拷問を加え、神の力を試みる。そして神父は拷問の恐怖にすぐさま屈して自分が教会を混乱させるために送り込まれたお猿であると告白し、トマス・ビルバトゥアは署名入りのその告白を種に娘の解放を神父に迫り、神父の懇願にもかかわらず異端審問所は娘の解放を拒むので、神父の告白は国王カルロス四世の手を経由して教会に届き、教会の糾弾を恐れた神父は国外に逃亡、いきなり15年が経過してフランス軍がスペインに現われ、フランス軍占領下のマドリードでは理性の光を浴びて俗人となったロレンソ神父が異端審問所を告発し、解放されたイネスは獄中で産み落とした自分の娘を探して町を歩き、その娘の父親が自分であることを知ったロレンソ神父は事実を糊塗するために奔走するが、ウェリントン率いるイギリス軍の接近によってフランス軍はマドリードから後退、神父は逮捕されて宗教裁判によって有罪判決を受け、悔い改めることを勧められる。
ランディ・クエイドが実はハプスブルクな顔をしていた、というのは意外な発見であった。ハビエル・バルデム扮するロレンソ神父の変節ぶりは見ごたえがあり、ナタリー・ポートマンは悲劇的な母娘二役に挑戦してなかなかの役者根性を発揮している。よく考慮された脚本と慎重な演出は見ていて非常に心強く、ゴヤの視界に現われたであろう様々な顔がたくみに配置されているのが面白い。 


Tetsuya Sato