2014年9月15日月曜日

許されざる者

許されざる者
Unforgiven
1992年 アメリカ 132分
監督:クリント・イーストウッド

極悪非道の名が高いウィリアム・マニーはすでに悪事から足を洗い、妻の墓の傍らで二人の幼い子供を養いながら農夫となって豚を育てている。そこへキッドと名乗る若者が現われて賞金稼ぎの仕事に誘い、一度は断ったウィリアム・マニーは子供の養育費ほしさから考えを変え、そこにかつて相棒ネッドも加わり、三人でワイオミングのひなびた町を目指して進んでいく。町では一人の娼婦が二人連れの牧童の一方によって顔を切られ、町を仕切るダゲット保安官の采配によって牧童と娼館の主人とのあいだではすでに話がついていたが、それでは収まらない娼婦たちによって二人の牧童にあわせて千ドルの賞金がかけられていた。その賞金を目当てに英国人の名高いガンマン、イングリッシュ・ボブが登場するが、保安官によって瞬時に返り討ちにされ、町に到着したマニーたちの前にもこの保安官が強圧的な態度で立ち塞がる。
ウィリアム・マニーがクリント・イーストウッド、保安官がジーン・ハックマン、ネッドがモーガン・フリーマン。ウィリアム・マニーは十年ぶりに銃を握り、久々に馬にまたがるが、その馬はすでにひとを乗せることを忘れているので何度となくマニーを振り落とす。相棒ネッドはライフルの名人で知られていたが、これもライフルを握るのは久々で、チームの三人目キッドにいたっては大言壮語を繰り返すもののひとを殺したことは一度もなく、しかもどうやら近眼らしい。対するダゲット保安官は老いてなお強壮で、小さな町に四人もの保安官助手を配置してたくみに平和を守っているが、その一方でこつこつと自分の家を建てていて、その家はなぜか奇妙に歪んでいる。何もかもがもどかしくて心地の悪さに満たされていて、それが不穏な静謐のなかに配置され、過去がよみがえり、暴力がおこなわれ、登場人物たちは加害者も被害者も自己正当化を繰り返し、やがて更生した悪の権化が闇の底から雨を破って現われて男たちにモラルを問い掛けて立ち去っていく。深みがあり、味わいもある実に堂々とした作品である。エンディング・クレジットの最後に現われる「セルジオとドンへ」という献辞は涙を誘う。 

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