Alexander the Great
1956年 アメリカ 135分
監督:ロバート・ロッセン
ピリッポス二世と王妃オリュンピアスのあいだに生まれたアレクサンドロス三世は学友とともにアリストテレスのもとで教育を受けながら戦場の栄光に焦がれているとピリッポス二世の命で王の留守を預かる摂政となって王都ペラの統治にあたり、続いてカイロネイアの戦いで父を窮地から救い出し、使節としてアテナイに送られてペラへ戻るとピリッポス二世が暗殺されて王位を継承することになり、そのまま父の東征事業も継承してマケドニア軍およびコリントス同盟軍を率いてアジアに侵入、グラニコスの戦いでペルシア軍を破り、イッソスの戦いでもペルシア軍を破ってダレイオス三世の妻子を捕虜にし、ダレイオス三世が側近によって殺害されると側近を処刑、そのままとりつかれたように東進を続けてインドへ侵入、アジア化したアレクサンドロスに周囲の批判が高まったころ、突然目が覚めたように撤退を開始してバビロンに到着するとダレイオス三世の娘ロクサネと結婚し、祝宴中に倒れて後継者をはっきりと指名しないまま死亡するまで。
監督、脚本は『オール・ザ・キングス・メン』のロバート・ロッセン。 アレクサンドロスがリチャード・バートン、ピリッポス二世がフレデリック・マーチ、誰もはっきりと言わないけれどディオニュソス信奉者の母オリュンピアスがダニエル・ダリュー、アテナイ人メムノンがピーター・カッシング、そのラディカルな妻ベルシネがクレア・ブルーム。マケドニアはスペインで撮影されていて、ふつうの村がそのまま背景に使われている。ペルシアはトルコで撮影されているらしい。衣装、美術などが凝っていて面白いし、イッソスの戦いの前のペルシア軍の多民族ぶりもなかなかに楽しい。戦闘シーンではペルシアの鎌戦車が登場するが、あえなく敗退する。マケドニア式の槍も登場するが、ファランクスで使われることはなく、もっぱらテントの支柱に使われている。基本的に戦闘は騎兵のがむしゃらな突撃だけで、史実に即してデザインしようとした痕跡は見受けられない。ピリッポス二世の暗殺までがほぼ前半を占めていて、いかにもマケドニア的な無節操な政治劇が展開し、後半はかなりざっくりと東征を扱うという構成で、アレクサンドロスの短い生涯を最初から最後まで追うという主旨に対して非常に正直に作られていて、映画として出来がいいかどうかは少々疑問を感じないでもないものの、アレクサンドロスという扱いにくい素材をバランスよくよくまとめていると思う。
Tetsuya Sato