Iron Man 3
2010年 アメリカ/中国 133分
監督:シェーン・ブラック
『アベンジャーズ』のチタウリがよほどに恐ろしかったのか、あるいはあのときの自由落下が恐ろしかったのか、あるいはシャワルマで激しく盛り下がったことがトラウマになったのか、そのあたりのところがいまひとつ判然としないものの、つまりニューヨークのあの一件でPTSDを抱えてささいなことでパニック状態に陥るようになったトニー・スタークの前に1993年にベルンでトニー・スタークに待ちぼうけを食らわされて以来、すっかり絶望のとりことなった男アルドリッチ・キリアンが現われてアメリカにテロをしかけるので、ケロロ軍曹がガンプラを量産するようにアイアンマン・スーツを量産しているトニー・スタークが立ち向かう。
アルドリッチ・キリアンがガイ・ピアースで、みずからを遺伝子改造した結果、口から火を吹いたりするのである。そしてそのガイ・ピアースにあやつられているアラブないんちきテロリストを演じるのがベン・キングズレーで、これが素敵なくらいに集中力を欠いているのである。小さなところから大きなところまでアイデア満載で、そのアイデアが実にうまく消化されていて、シチュエーションだけをとらえれば暗くなっても不思議がないような内容を最後までコミック演出で持たせてしまうのである。トニー・スタークが次から次へとスーツを「着替える」ところが意外なくらいに見せ場になっているし、量産されたアイアンマンが軍団になって現われるところは感動的に盛り上がるし、マーク・ラファロはただ居眠りをするためだけに登場するし、という具合で実においしい。ジョン・ファヴローの顔出しが少々邪魔ではあるものの、グウィネス・パルトローの腹筋と豊富に盛り込まれたアイデアと確実にテンションをたもった演出によってシリーズ最高作に仕上がっている。
Tetsuya Sato